奄美大島には電車が走っておらず、二次交通の手段が限られてしまうため、奄美大島にご旅行される多くの方がレンタカーをご利用になります。

奄美大島のレンタカーは沖縄や本土に比べ、比較的安い料金で借りることができますし、レンタカーであればバスやタクシーを利用して移動するよりも待つ必要がない分、時間的な制限も少ないので奄美観光を存分に楽しむことができるでしょう。

ただし、「事故がなければ」です。

今回は私が観光客のお客様をお迎えしている経験の中で感じた、注意した方がいいことや気をつけた方がいい道、実際に事故が起こってしまった場合すべきことなどをまとめました。

知ってるのと知らないのでは大きく違いますので、ぜひ最後まで読んで、楽しいはずのご旅行を事故の辛い思い出にしてしまうことのないように参考にして頂ければと思います。

速度超過

この写真は奄美大島南部の勝浦という場所で実際に自損事故を起こしてしまった車です。下り坂からのカーブで速度を落とし切れておらず、曲がり切れずに横転してしまいました。

幸いにも乗っていた人たちに大きなケガもなく、無事でした。また、交通量が少なかったことで他の方の巻き込みなどもありませんでした。

それでも事故当日は警察や私たち、そして保険業者等との立会いや聴取で長い時間拘束されます。事故後も私どもから代車の手配はさせていただきましたが、翌日以降も病院での身体の検査や損害の確認、ご予定のキャンセルや変更等で事故以後はとてもご旅行を心から楽しむことはできなかったでしょう。

「カーブで速度を落とすのは当たり前だし、自分は運転に慣れているのでそんなことにはならない」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし“知らない道”に“慣れない車”、ご旅行で“上がっているテンション”、これだけの要因が揃ってしまうご旅行でのレンタカーご利用です。どんな方でも気をつけて運転していただく必要があると私は思います。

立ち入り禁止区域、私有地等への進入

観光を目的として来られ当店の4WD車をレンタカーとしてご利用されるお客様の中には、「ガイドなしでも自分で行けばいい」と車で知らない路地や山道に入っていってしまう方がいらっしゃいます。

奄美大島は世界自然遺産となりました。そしてそれ以前から国立公園指定されている箇所もあり、その他にも様々な理由から立ち入り禁止としている場所が多く存在します。それらの場所にガイドなしで行くことは知らずに希少な植物を踏み荒らしてしまう可能性があるのはもちろん、自身を大きな危険にさらすことにもなります。

車で入れてもその先はUターンするスペースもない行き止まりの路もあります。バックで通常の道まで無事に戻るには相当の練度のいる作業となるでしょう。タイヤがはまって動けなくなってしまう可能性や最悪転落などの危険がある路もあります。そしてそういった場所は携帯電話の電波が届かない場所であることも普通です。

車が動かせなくなってしまい、携帯電話の電波のある場所まで歩くのも非常に危険です。奄美大島にはハブがいます。整備された場所ならともかく、上記のような場所であればまずいることでしょう。嚙まれれば、すぐに適切な処置をしなければ本当に死んでしまう可能性もあります。

そして、助けを呼ぶことができたとしても、その場所が私有地であったり立ち入り禁止の場所であった場合、警察や救急によって、土地の管理者の許可なくそこに立ち入ったことが明確となり、住居侵入罪によって処罰される可能性もあります。

当店のレンタカーはオフロードの走行も楽しんでいただけるよう、汚れはもちろん枝や跳ね石のキズ等で後から請求することは一切ございません。ですが、それはどこに行ってもいいという許可ではありません。お客様が安全に楽しめるように、きちんと調べて手続きを踏んで行かれるか、しっかりとしたガイドさんに案内をお願いした上でご利用ください。

ちなみに、他の多くのレンタカーの場合、理由の如何を問わず、小さなキズや汚れ、タバコや釣り餌の匂い等であっても2万円~2万5千円の罰金が請求される場合がございます。これはNOC(ノンオペレーションチャージ:修理にかかる日数や費用とは関係なく、一律に罰金を定めたもの。自走できる場合とそうでない場合で金額を別に設定していることが多い)となるので免責補償制度に加入していても請求されます。

免責補償制度の補償内容やNOCについてはご利用になられる各レンタカー会社の約款をご確認ください。

奄美大島の道(立ち入り禁止区域以外でも普通にあること)

奄美大島の道路はだいたいが片側1車線の2車線道路です。それほど広いわけではありませんが、信号や道路標識もシンプルで基本的には交通量も多くないので、通常の移動であれば複雑な都会の道路よりも、運転しやすい場所だと私は思っています。

ただ、こういった場所があるというのを知っているのと知らないのとでは事故のリスクが大きく変わりますので下記にまとめました。

・人気スポットでも道や駐車スペースが非常に狭く小さい場所もあります。特に奄美北部笠利町にある崎原ビーチは非常に美しく人気の観光スポットですが、そこにたどり着く手前の道は“起伏が激しく”“カーブが多く”、“狭い1.5車線ほどの幅の路”が続き、奥の駐車場までの行き止まりの路である為、駐車場がいっぱいになるとUターンをするのも難しく、さらにその状況の狭い路で渋滞の列ができてしまうこともあります。

できるだけ目的地までの道状況や混雑状況を把握して、厳しいようなら目的地の変更も考慮するようにしましょう。ちなみに上記の例の崎原ビーチであれば、近くに同じくらい美しい打田原ビーチもあり、そこも駐車場は大きくないものの、そこまでの道は広めなので候補としてよくおすすめしています。

・加計呂麻島はフェリーで渡る必要がありますので事故が起きた場合でも本島からはすぐに対応に行けません。交通量は少ないことが多いですが、1.5車線以下の狭い路が多いので、自損や接触事故には十分に気を付ける必要があります。

レンタカー会社によっては加計呂麻島へのレンタカーでの渡航を禁止事項に含めている場所もございますので行かれるご予定の方は事前にご確認ください。

・野生生物や人のとびだしにご注意ください。都会に比べると車も人も圧倒的に交通量が少ないので、ついスピードをだしがちです。ですが、山間部では兎や鳥、畑の側では“おじい”や“おばあ”、観光スポットでは他の観光客やそのお子様、と危険はいっぱいです。

人に関しては、交通量が少ないからこそ、歩行者側も油断していてひょっこり道路に出てきてしまうことがあります。野生生物も天然記念物などの希少な生物である可能性ももちろんですが、突然でてきてぶつかることで驚いてハンドル操作を誤り事故に繋がってしまうこともあります。

スピードの出し過ぎに注意して、いつでも止まれる速度と走行を心がけましょう。

・場所によっては狭い路に大きめの側溝があり、なのに側溝に蓋がない場所があります。タイヤが落ちてはまってしまう事故があります。特に夕方から夜に車を走らせるときは注意しましょう。明るくても草が生い茂り側溝があることがわからない場合もあります。

なるべく車線中央を走り、路側帯をはみ出して路肩に入るようなことのないようにしましょう。

事故が起きてしまったらどうするか?

いろいろ気を付けていても事故は起きてしまう可能性があります。ここでは実際に事故が起きてしまったらやるべきことを時系列順に記載します。

  1. 負傷者の救護と道路の安全確保
  2. 警察・救急への報告
  3. レンタカー会社への報告

レンタカーに限る話しではありませんが、道路交通法72条1項は、交通事故が起きた時の運転手の義務を規定しています。まずは負傷者の確認や救護、二次被害を防ぐための安全の確保を行ってください。その後、警察と救急への連絡を行い、最後にレンタカー会社への報告をお願いします。

事故を起こして1.や2.をしなかった場合はレンタカーであるかどうか以前に報告義務違反や救護義務違反として法的に処罰される可能性があります。

そして、負傷して救護が必要な場合を除き、警察やレンタカー会社の担当者、その他関連業者の現地着まで現場待機でお願いします。自身の判断で業者の確認を待たずその場を離れてしまった場合、レンタカー業者の保険が適用されず、その場合の損害賠償や慰謝料については、加入している補償制度の如何に問わず運転者自身でのご負担となる可能性がありますのでお気をつけください。

上記以外でも下記のような状態で事故を起こしてしまった場合、保険適用や補償対象になりません。

  • 飲酒運転をして事故を起こした
  • シートベルト未着用だった
  • 免許証不携帯だった
  • レンタカー会社に連絡することなく被害者と示談をした
  • レンタカーの引渡し時に申告していない人が運転中に事故を起こした
  • レンタカーの延滞中に事故を起こした
  • 定員をオーバーして状態で運転していた
  • 車道以外の場所を運転していた   など

まとめ

運転が怖くなるようなことを多く記載しましたが、あらかじめ知っておけば高度な運転技術や複雑な知識を必要とせず誰でも未然に防げる内容ばかりとも思います。また、不安な場所へはガイドをお願いし、危険な場所には近づかない、ことが大事だと思います。

レンタカーは“普段乗りなれていない車であること”“土地勘のない道を走ること”を改めて意識し、速度超過や脇見運転を決してしないようにして、事故を起こさないようにご利用ください。

この記事で少しでも多くの皆様の旅の安全と楽しい思い出の充実に繋がることを願っています。